播磨の酒 八重垣
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  山田錦の素顔

 

 ちょっと風変わりな名前の試験場が、加東郡社町にある。

 酒米試験地。正式には兵庫県立農林水産技術総合センター農業技術センター作物部酒米試験地という。ここに、山田錦の原々種、いわば「純血種」が保管されている。

 山田錦は全国各地で栽培されている。種籾も各地で採取され、栽培面積を広げているが、そうした種は、他品種の花粉が付着して、純粋山田錦に比べて微妙な変化を来たすのは避けられない。純血を保とうとすれば、”純粋培養”するしかない。その純血保存作業と研究に当たっているのが酒米試験地だ。純粋種は、ここから各地へ発信される。

 この試験地に、全国の酒造家から寄せられた声がある。

「春の全国新酒鑑評会で、何年か連続して金賞を取ったことがあった。酒米は、日本晴を使っていたのだが、どんな米でも立派な大吟醸ができると皆に吹聴していた。念のためにと、山田錦と日本晴、両方で仕上げたところ、どちらも金賞を得た。ところが、この二種を、ひと夏貯蔵してあらためて利き酒をしてみて驚いた。味の幅、奥行き、きめの細かさ、なめらかさ、香味のバランス、すべてにおいて山田錦のほうが、数段勝っていた。これが”秋晴れ”とか、”秋上がり”とかいわれるものなのだろう。山田錦の不可思議さにすっかり魅入られている」

酒米試験地の水田では、さまざまな品種の稲がいろいろな条件のもとで栽培されている。
酒米試験地(社町沢部)。酒米の品種育成、栽培法の研究を行っている。

「いろいろな酒米を使ってきたが、米の味が酒に乗り、透明感のある味わいで奥行きの深さを感じさせ、長期熟成に耐えるのは山田錦しかない。20年古酒を熱望している」

「何が酒造好適米か科学的に数値で示せと言われても難しい。ただ、ほとんどの人が山田錦を最も高く評価しているという事実がある。だから、山田錦の特徴が、酒造に最も適した条件になるのだろう」

 もっとも”山田錦の幻影”に惑わされるなといった声もある。ブームの過熱といった側面も、確かにある。しかし、口うるさい酒造家の、これだけの評価があるのも事実だ。山田錦を使わない新酒は新酒は品評会で入賞しない、とまでいわれる。日本一、王者といわれるゆえんである。

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